博士の愛した数式


ある学生が好きだというその本を、私も読んでみようと思った。

それは、とても純粋で素朴な愛情と、静かなやさしい美しさを感じる作品だった。

ただそこにある数字にも意味があること。
その意味を大切に扱い、慈しみ、称賛すること。
私が学生たちに対してやろうとしていることと、よく似ている。

そこに大事なものがあることに気づき、自覚することが大切なことなのだ。
私の仕事は、その気づきを促すこと。
自覚を促し、応用の可能性を共に探ることだ。

主人公は、博士の問いかけや数字を大切に扱う様を通して、
いろいろな気づきを得ていく。

作品全体に流れる空気は素朴で静かでやさしいけれど、その中に時折頑固さが現れる。
そんなところが、この本を好きだと言った学生によく似ている。

博士は、『考える』ことを大切にした。
「今、ここにあること」に真剣に向き合い、
自分の頭で考えて導き出したなら、
それが数学的に正しくなくても、博士は賞賛した。
何かを導き出したプロセスに目を留め、その真摯さを、美しさを讃えた。

博士のような素朴さや温かさで、
学生たちの気づきを促し、『考える』ことを促していこう。



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  1. 2017/05/03(水) 16:46:53|
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走り出せ


毎年この時期は、動き出しの遅かった学生たちも次々に就職先が決まっていく。
入社までのほんのつかの間、ホッとする時間だろう。

新しい世界へのスタートラインはもうすぐそこだ。
走り出せ。希望を持って。

そして、来年卒業する学生たちも就職活動を開始した。
走り出せ。挑戦のときに。

厩務員を目指していくつかのファームを体験した彼女も、
みごとに第一志望のファームへの入社を決めた。

これからいろんなできごとが彼らを待つだろう。
うまくいかないことも、苦しいことも、時にうれしいことも。

どんなできごとにも『一所懸命』に向き合い、
『今できること』に全力を注いでほしい。
『今、どうすればよいか』を真剣に考えてほしい。
それを積み上げていくことが、成長につながるから。

生まれたての仔馬が、あんなにも華奢な脚で、自力で立ち上がるように。
社会人1年生の若者たちも、『自ら』行動を起こしてほしい。

立ち上がった仔馬が親のあとを追って走ることを覚えるように。
先輩たちの姿を見て、自分が何をしたらいいか、どうしたらいいかを考えてほしい。

人との関わりの中で、競走馬として走ることを覚えるように。
多くの人と関わりながら刺激を受け、変化していくことを恐れないでほしい。
変化することは、成長するってことだから。

競走馬がいくつものレースを経験して得意な距離やコースを見極めていくように、
多くの体験を通して自分の得意な仕事ややりかたを身につけていけばいい。
その成長を願い、祈り、喜ぶ人が必ずいるから。

走り出せ。颯爽と。



  1. 2017/03/04(土) 17:06:14|
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夢と行動力


「何をしたいのかわからないけど、とりあえず実家に帰る」

地方から進学のために出てきて、警察官を目指し、希望叶わず。
実家が大好きだという彼女はそう言った。

彼女の実家近くでどんな求人があるのか情報を提供したが、
どうやら彼女の興味をひくものはないようだった。

これまでの経験に話を移すと、
それはそれは様々なことに興味を持ち、興味を持っては挑戦し、
なかなかおもしろい体験をしていることがわかった。

子どもの頃から馬が好きで騎馬隊を目指したり、
競走馬に興味を持って場外馬券場でアルバイトをしたり。

彼女は自分のやりたいこと、好きなことに立ち返った。
騎馬隊の夢敗れた今、競走馬を育てる仕事をしてみたいという。
そのためなら全国どこにでも行き、住み込みで働くと。

調べてみると、資格要件等をクリアし、彼女が応募できそうな
厩務員の求人をいくつか見つけることができた。
しかし、ただ好きなだけでやっていける世界ではない。
今彼女に考えうる全ての想像力を使っても、それ以上に厳しい世界。
生きもの相手であるがゆえ、勤務時間などあってないような世界だ。

彼女の夢と行動力を後押ししながら、
本当に厳しい世界に飛び込む覚悟があるのか、何度も確認した。
時に悔し涙を流しながら、それでも彼女はやりたいと言った。
1年の中でも一番厳しいこの季節に、現場体験に行くことを決めた。

彼女は何を感じ、何を得て帰ってくるのか・・。
もしも彼女が別の道を選ぶとしても、この体験は貴重なものになるだろう。
そして力強く、自分で決めた道を進んでいくだろう。

私はただ、彼女の夢を応援するだけだ。
彼女の挑戦欲を満たすために、手伝いをするだけだ。
そしてもしも彼女がめげそうになったとき、ほんの少し話を聞いて、
彼女の持つ夢と行動力を、思い出させてあげるだけだ。


  1. 2017/02/10(金) 15:43:21|
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ことばの感じ方


彼女は、就活することや働くことに、自信を失くしていた。
彼女が発する言葉や表情に少し気を配れば、
それはすぐに気づけるはずだった。

にもかかわらず、彼女が何とか絞り出して書いてきた書類に、
自分本意なダメ出しだけして帰したスタッフがいる。

改善点を指摘するのはいい。
指摘したうえで、それについて考えさせるのもいい。
けれども、誰もに同じ口調で指摘すること、
誰もに同じように改善を強要すること、
それはキャリア支援のプロとして、実に情けなく、恥ずかしい・・。

彼の心ないダメ出しの言葉によって、
彼女の心はさらに力を失い、
「もう何も書けない」ところまで追い込まれた。
私が彼女に出会ったのは、そんなときだった。

初めて会ったとき、彼女は今にも消え入ってしまいそうだった。
先のスタッフから言われたことや、「もう何も書けない」と思う気持ちや、
働くことさえ自分にはままならないのではないかと思う気持ちを、
思うままに話してもらった。

話の中に、心の奥にある不安の元凶のようなものを見た。
同時に、先のスタッフがつけた比較的浅いところにある傷も。

彼女が伝えたいことをまっすぐに理解するよう心がけ、
私が受け止めたものが彼女の意図と相違ないか確認しながら関わった。

後に彼女は言った。
「あの時あんな風に私のことばをきちんと聞いてくれてうれしかった。」
「こんなに正しく受け止めてくれた人は初めてだった。」と。
それがきっかけで、「この人には話しても大丈夫」と思ったのだという。

私は日頃から、ことばをとても大切にしているつもりだ。
こだわりと言った方がいいかもしれない。

同じことばを使っても、使い手のニュアンスと聞き手のニュアンスは微妙に食い違う。
私はできるだけ、使い手のニュアンスを正しく受け止めたいと考えている。
それによって、助言や提案の方向性が変わるからだ。
相談者の心が開かれるか閉じられるかにも、もちろん影響する。

支援者としても、ひとりの人間としても、
私はずっと、ことばを大切にしていたい。
ひとりひとり違う、ことばの感じ方を大切にしたい。


  1. 2017/02/04(土) 14:16:08|
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働くこと


働くってことは本当に人を成長させる。
定着支援のたびに感じることだ。

昨年の春、大学を卒業して就職した男の子。
学生時代に出会い、個別支援を続けて就職した彼。

彼はとても優しい子に、他人の気持ちを考えられる子に、
育てられてきたようだった。
それはとても尊く、大切なこと。
自分の良さとして、自信を持っていいこと。
けれども、何とも弱すぎる。
主張する力や、自分で判断する力が足りなすぎる。

卒業直前、彼は3社の内定を得た。
その中で、最も彼のよさを活かしながら、
人として成長できるであろう企業はどこか。
そう考えたとき、私の中では明確にある1社を指し示していた。

しかし、当然ながら就職は彼の人生であり、決めるのは彼自身だ。
意思決定の助けとなるであろう情報を提示し、
自身の置かれている現状やこれからのビジョンについて考えさせ、
そうして彼は、私とは異なる1社を選択した。

就職後の定着支援サービスを案内して彼を送り出してから、
早1年になろうとしている。

この間、何度か近況報告があり、
心が折れそうになる度に、相談があった。

研修期間を終え、彼は九州に配属された。
その報告があったとき、思った。
なるべくしてなった、来るときが来たと。

近年、国は若者の労働力確保のために、
労働法の周知活動やいわゆる『ブラック企業』の公表など、
労働者を守る仕組みを強化している。

首都圏では、それらの施策が比較的行き届いている、
あるいは、不足が判明すれば即座に若い労働者たちから足元をすくわれる。

対して、地方では旧態依然としているところもまだまだあるだろう。
その地域の特色や事情というものがあるはずだ。
彼はそんな環境の中で、強くなること、成長することを強いられることになった。

しかしこれは、彼には必要な道程だったのだと思う。

幸せなことに、彼には素直さがある。
定着支援サービスがあると聞けば電話をしてくるし、
こんな対処法を試してはどうかと提案すればそれを試す。

そうして今年の正月に彼は言った。
「学生の頃に比べたら、この9ヶ月でずいぶん強くなったと思う」と。
今辞めるのは中途半端で悔しい、
もっと成長するまでは諦めない、
そう宣言して、九州に戻って行った。


  1. 2017/02/03(金) 21:54:19|
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